プレゼントを探せ!

サンタさんを疑い始めた10歳の頃

サンタクロースの存在をいつまで信じていただろうか。厳密には、自分の枕元に彼がプレゼントを届けに来てくれているということを。私は、10歳くらいまでだった。

 

いつまで、とは言ったが、何か決定的な証拠を掴んではっきり”分かった”のではなかった。

さまざまな物事を見聞きして成長するにつれ、自然と「あれ?サンタさんの正体ってもしかして……」という疑問が浮かぶようになったのだ。

 

じわじわ何かを察していくような感覚にどこか寂しさを覚えながら、小学4年生のクリスマスを過ごしたのを覚えている。

 

プレゼントを探せ!大作戦

良いのか悪いのか、私は子供の頃から白黒はっきりさせたい方だった。この性格と先ほどの疑問が合体してしまい、ある時ふと思ったのだ。

"サンタ"の証拠を掴んでみたいーー。

 

そして、小学5年生のクリスマス前、私は一つの作戦を決行した。

名付けて、プレゼントを探せ!大作戦!!

 

内容は名前の通りで、サンタさん()が用意したプレゼントを発見するべく、家中の隠し場所になりそうなところを片っ端から開けて確認していくというものだ。なんて迷惑な子供なのだろうか。

 

もちろんサンタさん()にバレてしまっては困るので、あくまでこっそりと。

それから、幼い兄弟の夢を壊すのはあまりにも可哀想なので、誰にも知られないよう、親が買い物に出ている時などを狙って作戦を実行していた。

 

見つけたプレゼントをサンタ()に見せたり問い詰めたりしたいという気持ちは微塵もなく、あくまで証拠を掴み、自分が納得するためのものだった。

 

はりきって捜索開始!してみたはいいが……

時期はクリスマスイブの4日ほど前から。思いついた場所はすべて探していった。

ベッドの下を覗き込んでみたり、玄関の大きな収納を開けて、奥まできちんと目視しながら1段ずつ探したり。

普段あまり着ない服を家族分まとめて収納しているクローゼットも開けて、生い茂る木々を掻き分けるかのように探してみたりもした。

 

プレゼントにお願いしたものは自分で覚えていたので、そのサイズの物が入りそうな場所はすべて確認した。したつもりだったのだが。

 

プレゼントが見つからない。

 

押入れも開けて布団を掻き分けたし、家具の下や裏、もちろん中も一通り見た。

自分の身長では見えない高いところなどは、わざわざスツールを持ってきて確認した。

キッチンの収納は空きがないから隠しようがないし、まさかと思って確認した洗面所にもトイレにも、さすがになかった。

 

「昨日なかった場所に今日はあるかも」と考え、同じ場所を数回見てみたりもしたが、思った以上に作戦は難航した。

結局、サンタが届けてくれるまで、プレゼントが私の前に姿を現すことはなかった。

 

翌年のリベンジ、それ以降も続けてみたものの

一度では諦めがつかなかったので、翌年の小学6年生で再チャレンジするものの作戦失敗。

それ以降は部活などもあり、プレゼント探しにそれほど時間を割けなかったので細々と続ける程度になっていった。

そして、中学卒業とともにサンタは来なくなった。

 

ついぞ私は、プレゼントを見つけることができなかった。

 

それでも楽しかった思い出

作戦は失敗に終わったが、頭を使って場所を予想し、家中のあちこちを探し回るのはとても楽しかった。

誰にもバレないようにこっそりと、というところで余計に心が躍ったのだろう。

 

思い返すと唯一探さなかった場所がある。車のトランクだ。自分では開けられないし、プレゼント探しの時期に車に乗った覚えもない。

それに、プレゼントの保管場所は家の中だと信じて疑わなかったから、わざわざ駐車場へ覗きにいくこともしなかった。盲点だったなと思う。

 

結局、どこに隠していたのかは今も知らないし、尋ねるつもりもない。

あの頃の馬鹿馬鹿しくて楽しかった出来事を、10歳の私にとっては大きく、今となってはあまりに小さなその謎を、そのまま残しておこうと思う。